
自己破産の用語集
1.
破産手続開始の要件
1.
破産手続は、債務者や債権者の破産申立てを受けた裁判所によって破産手続開始が決定されます。
裁判所によって破産手続が決定されるためには、破産手続開始の要件を満たしていなければなりません。
破産手続開始の要件には、大きく分けて実体的要件と手続的要件の2つがあります。
実体的要件を欠いた場合には、破産申立てが棄却となり、手続的要件を欠く場合には、破産申立てが却下となります。
実体的要件には要件が3つあり、@破産原因があること、A破産能力があること、B破産障害事由がないことが要件になります。
手続的要件にも要件が3つあり、@破産申立権者からび破産申立てがあること、A裁判所に管轄権があること、B手続費用の予納があることが要件になります。
2.
破産原因
2.
破産原因は、破産手続開始の要件の実体的要件になります。
「破産原因がある」と、破産手続開始の要件の実体的要件の1つを満たすことになります。
「破産原因がある」とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済できない状態をいいます。
第1に、「支払能力を欠く」とは、財産がない場合であっても債務者の労力や信用によって資金を調達することができるのであれば「支払能力を欠く」とはいえません。
反対に、財産がある場合であっても金銭に換えることが難しいのであれば「支払能力を欠く」といえます。
第2に、支払能力を欠くことが一般的かつ継続的でなければなりません。
つまり、特定の借金だけ支払えていても、すべての借金についてみると債務者に支払う資力がなければ支払不能となります。
反対に、特定の借金だけは支払えなくても、すべての借金についてみると債務者に支払う資力がある場合には支払不能とはなりません。
また、一時的には支払える状態であっても、返済の見込みのない借入れを繰り返している場合には、支払不能ということになります。
第3に、支払不能であることが客観的状態でなければなりません。
すなわち、債務者の思い込みによって支払えないと思っているだけでは足りず、客観的にみても支払えない状態でなければなりません。
7.
5.
破産管財人
5.
破産管財人とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者のことをいいます。
破産管財人は、同時廃止事件を除いて、破産手続開始の申立てがあり、破産手続開始の決定があると、裁判所が選任します。
この破産管財人には、一般的には弁護士や弁護士法人がなります。
裁判所は破産手続開始の決定をしたときは、直ちに、@破産手続開始の決定の主文、A破産管財人の氏名又は名称、B破産法31条第一項の規定により定めた期間又は期日を公告および通知します。
破産管財人は、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有します。
また、破産管財人の申立てにより、決定で、破産者に対し、破産財団に属する財産を破産管財人に引き渡すべき旨を命ずることができます。
ただし、次の行為をするには、裁判所の許可が必要になります。
@特許権、実用新案権、著作権などの任意売却
A営業又は事業の譲渡
B商品の一括売却
C借財
D包括遺贈の放棄の承認又は特定遺贈の放棄
E動産の任意売却
F債権又は有価証券の譲渡
G訴えの提起
H和解又は仲裁合意
6.
自由財産
6.
破産者の財産のうちで破産財団に属さず、破産者が自由に管理処分することができる財産のことをいいます。
自由財産には次のようなものがあります。
□99万円以下の現金
□差押禁止動産
(1)債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
(2)債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
(3)標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
(4)主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
(5)主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
(6)技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
(7)実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
(8)仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
(9)債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
(10)債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
(11)債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
(12)発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
(13)債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
(14)建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
□差押禁止債権
退職手当・給与の4分の3に相当する部分
□特別法上の差押禁止債権
老齢年金受給権、生活保護受給権
破産財団
7.
破産財団とは、破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもののことをいいます。
このような概念が必要となったのは、破産手続が、債務者の財産を調査し、一定額以上の財産がある場合にはお金に換え、各債権者の債権額に応じてお金を分配する手続きになりますので、分配する対象としてこの概念が必要となったのです。
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団となります。
また、破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属します。
ただし、すべての財産が破産財団となると、破産手続が終わった後、破産者が生活できなくなってしまいます。
そこで、破産財団に組み入れず、破産者が自由に管理処分できる自由財産という制度を設けました。
自由財産は別の詳しく書きましたが、簡単にいうと99万円以下の現金と、生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳および建具になります。
8.
破産債権
8.
破産債権とは、破産者に対し破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に属さないもののことをいいます。
破産債権は、特別な定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、これを行使することができません。
もし、仮に破産手続によらずに破産債権を行使できるとするならば、債権の回収が早い者勝ちになったり、違法な実力行使が横行してしまう可能性があるからです。
破産債権の要件は、次の4つです。
@破産者に対する債権で、破産者の総財産から満足を受けるものであること
A財産上の請求権であること
B執行可能な請求権であること
C破産手続開始の決定前の原因に基づいて生じた請求権であること
また、破産債権は、破産手続において、債権額に応じて平等に取り扱われるのが原則です。
しかし、債権の性質や他の債権者との関係によっては債権の順位を付ける必要があったため(1)優先的破産債権、(2)劣後的破産債権の二つを設けました。
9.
破産債権の順位
9.
この破産債権は、破産手続において、債権額に応じて平等に取り扱われるのが原則です。
しかし、債権の性質や他の債権者との関係等によっては債権の順位を付ける必要があります。
そこで、破産法では破産債権を@優先的破産債権、A一般の破産債権、B劣後的破産債権、C約定劣後破産債権の順位付けをしました。
優先的破産債権とは、破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権のことをいいます。
一般の先取特権などの一般の優先権が他の破産債権より優先するのは、保護の必要性が高いため政策的に優先的に弁済を受ける権利を付与したためです。
優先的破産債権には、次のようなものがあります。
□一般の先取特権のある債権
・共益の費用
・雇用関係
・葬式の費用
・日用品の供給
・国立大学法人の発行する債券の債権者の先取特権
・一般電気事業者たる会社の社債権者(短期社債権者を除く)の先取特権
□一般の優先権のある債権
・国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権
・地方税法の定める滞納処分により徴収することができる請求権
・企業担保権
これらの優先的破産債権間の優先順位は,民法,商法その他の法律の定めるところによります。
10.
破産債権の要件@
10.
破産債権とは、破産者に対し破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に属さないもののことをいいます。
破産債権の要件は、次の4つです。
@破産者に対する人的請求権であること
A財産上の請求権であること
B執行可能な請求権であること
C破産手続開始の決定前の原因に基づいて生じた請求権であること
このページでは、「@破産者に対する人的請求権であること」について解説を致します。
@破産者に対する人的請求権であること
破産債権は、破産者に対する金銭債権のような人的請求権である必要があります。
所有権のような物的請求権の場合には、取戻権として破産財団から取り戻すことになりますし、担保物件のような特定の財産についての権利の場合は、別除権となるからです。
11.
破産債権の要件A
11.
破産債権とは、破産者に対し破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に属さないもののことをいいます。
破産債権の要件は、次の4つです。
@破産者に対する人的請求権であること
A財産上の請求権であること
B執行可能な請求権であること
C破産手続開始の決定前の原因に基づいて生じた請求権であること
このページでは、「A財産上の請求権であること」について解説を致します。
A財産上の請求権であること
破産手続は、一定額以上の財産をお金に換えて、それぞれの債権者の債権額に応じて分配する手続になります。
つまり、破産債権はお金の分配によって実現するものなので、金銭として評価が可能なものでなければなりません。
したがって、金銭として評価が不可能な身分上の請求権等は、財産上の請求権とは言えば、破産債権としては認められません。
もっとも、財産上の請求権といえるためには、必ずしも金銭債権である必要はなく、金銭債権に転化し得るものであれば財産上の請求権といえます。
12.
破産債権の要件B
12.
破産債権とは、破産者に対し破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に属さないもののことをいいます。
破産債権の要件は、次の4つです。
@破産者に対する人的請求権であること
A財産上の請求権であること
B執行可能な請求権であること
C破産手続開始の決定前の原因に基づいて生じた請求権であること
このページでは、「B執行可能な請求権であること」について解説を致します。
B執行可能な請求権であること 破産手続は、債務者の財産を調査し、一定額以上の財産がある場合にはお金に換え、各債権者の債権額に応じてお金を分配する手続きになりますので、強制執行が可能な請求権でなければ破産債権とはなりません。
したがって、強制執行が不可能な請求権や裁判上請求できない請求権は、破産債権とはなりません。
13.
破産債権の要件C
13.
破産債権とは、破産者に対し破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に属さないもののことをいいます。
破産債権の要件は、次の4つです。
@破産者に対する人的請求権であること
A財産上の請求権であること
B執行可能な請求権であること
C破産手続開始の決定前の原因に基づいて生じた請求権であること
このページでは、「C破産手続開始の決定前の原因に基づいて生じた請求権であること
」について解説を致します。
C破産手続開始の決定前の原因に基づいて生じた請求権であること
「破産手続開始の決定前の原因に基づいて生じた請求権」という要件があるのは、破産財団の範囲が「破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産」としているためです。
破産債権は、その発生原因の全部が破産手続開始の決定前に備わっている必要はなく、基本的な発生原因が破産手続開始の決定前に備わっていれば、破産債権として認められます。
したがって、例えば、履行期未到来の債権であっても、債権の発生原因が破産手続開始の決定前であれば破産債権となります。
14.
否認権
14.
否認権とは、「破産手続開始決定前になされた破産者の行為、またはこれと同視される第三者の行為の効力を覆滅させる形成権であり、破産財団の管理機構たる破産管財人に属する権能」になります。
破産手続開始前であれば、破産者が自己の財産をどのように処分するかは債務者の自由です。
しかし、破産手続開始決定前に破産者は、すでに支払不能に陥っていることがあります。
そのような状況になっていれば、取り立てが厳しい特定の債務者にのみ債務を弁済したり、著しく安価で財産を処分することがあります。
特定の債務者にのみ債務を弁済すると、他の債権者の平等を害することになりますし、著しく安価で財産を処分すると、破産者の財産が減少してしまうので、債権者の利益を害してしまいます。
そこで、失われた財産を取り戻し、破産債権者に対する公平な配当を可能にするための制度が否認権になります。
否認権の基本類型には、詐害行為否認、無償行為否認、偏波行為否認の3つあります。
15.
免責不許可事由
15.
自己破産では、免責を許可されると、債務の支払いが免除されます。
つまり、自己破産をしても、免責の許可されなければ、債務の支払いが免除されないという意味でもあります。
破産法では、免責を許可されない自由を列挙しています。
これを「免責不許可事由」といいます。
免責不許可事由のいずれにも該当しない場合には、裁判所は免責許可の決定をすることになります。
免責不許可事由は下記の通りです。
@債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
A破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
B特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
C浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
D破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
E業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
F虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
G破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
H不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
I次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項 (同法第二百四十四条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
J第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
以上が免責不許可事由になります。
もっとも、免責不許可事由に該当する場合であっても、裁判所が破産手続開始の決定に至った経緯などの一切の事情を考慮して、免責を許可することが相当であると認めるときには、免責許可の決定をすることができます。
16.
破産債権の届出
16.
破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができません。
したがって、破産手続に参加しようとする破産債権者は、定められた期間内に、下記の@〜Dの事項を裁判所に届け出なければなりません。
@各破産債権の額及び原因
A優先的破産債権であるときは、その旨
B劣後的破産債権又は約定劣後破産債権であるときは、その旨
C自己に対する配当額の合計額が最高裁判所規則で定める額に満たない場合においても配当金を受領する意思があるときは、その旨
D前各号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項